2015年6月24日水曜日

ジャガーXE が冷め切ったDセグセダン市場を・・・の続き

  前回に引き続きまだ見ぬ「ジャガーXE」の素晴らしさを完全に想像して書いてみるという、なかなかシュールな内容でいきたいと思います。といっても薄々はお気づきかもしれないですが、各メーカーの現行Dセグセダンのどこが「冷めている」のかについて解き明かすのが裏テーマとなっています。ここ数年でグルーバルでの戦闘力を一段と増したと言われる日本車のDセグですが、結局のところ国内では本体価格の高騰がネックになって、2015年に突入しても相変わらず国内のセダンの販売が不調のままです。スカイラインやアテンザはそこそこ健闘していて、輸入車ユーザーを上手く取り込んでいるという意見もありますが、この2台に関してはサイズを拡大して接近したEセグ市場からの乗り換えユーザーを上手く吸い上げたというのが正直なところです。

  ちなみに現在のEセグは悲惨なまでの「超氷河期」で、Eクラス、5シリーズ、A6、GS、フーガとどれも突破口を見出せないままにモデルサイクルが終焉する時(FMCの時)を待っています。現行モデルが揃って元気が無い理由は、やはりやみくもなダウンサイジングによって、商品価値をことごとく破壊されてしまったことが大きいようです。ドイツ勢はどれも2L直4ガソリンターボの非力さと騒音で、高級車としての本質が大きく揺らいでますし、GSやフーガのベースモデルは国内専用のV6の2.5Lという「化石エンジン」です。どちらもまもなく直4ターボへの置き換えが進むようですが、現行の2.5Lの6気筒エンジンなんて、トヨタ、日産以外では中国メーカーしか使ってないです。この可もなく不可もなくといったつまらないエンジンのクルマが、乗り出しで軽く600万円を超えるわけですから、「なんで売れないの?」とメーカーが嘆くのは少々ナンセンスです。

  ベースエンジンがダメなら、上級モデルにすればいいわけですが、ドイツ勢だと6気筒搭載は乗り出し価格がおよそ900万円。GSとフーガなら700万円になります。これではポルシェ・ボクスター(700万円~)に予約が殺到する理由がなんとなくわかりますよね。ある程度立派に見えるセダンを買ってやろうと、意気込んで見積もってみたらとんでもない金額になって、どうせだったら思いっきり走れるスポーツカー買って楽しもう!ってなることもあるでしょう。さらにEセグは馬力さえ与えれば「直線番長」にはなれるでしょうけど、どうやっても機敏にはならないハンドリングには大きなマイナスイメージがあり、そのおかげで一気にスポーツカー(ボクスター)への情熱が駆り立てられそうですね。

  しかしDセグはというと、スポーツカーの頂点と言えるポルシェ911を撃ち落とすかのように、颯爽と登場した歴史を持つプリンス「スカイラインGT」が輩出されたスポーツセダンの王道セグメントです。確かにスカイラインはこのセグメント内では異端的存在ですが、BMW3シリーズをお手本にしていろいろなブランドから機動力を高めたモデルが発売されていて独自の進化を遂げてきました。しかし気がつけばどのブランドのモデルも、コンセプトの狙いはいつのまにか「Eセグ互換仕様」になってしまっています。その中でもいろいろなタイプがあるのですが、どれもこれももはや「Dセグ」ではない!と憤慨し、一抹の淋しさを感じる今日この頃です。

  まずスカイラインですが、「350GT」というハイブリッド車に関しては、Eセグ高性能車並みの直線番長っぷり(0-100km/hが5.6秒はスゴい)で、本体価格450万円ですから実に価値ある1台ではあると思います。そしてスカイラインの名に相応しい「ステアバイワイア」の実用化も十分に評価できます。しかし問題はそこから先で、まずクルマのキャラに合わない内装がお仕着せられていて、いかにも「プレミアムカーですよ!」という合理化意識が先走っています。そして当たり前のようにランフラットタイヤ装着がされ、ドライバーズカーという本質を放棄し、治安が悪い地域でのセキュリティーカーへと目線を変えた設計にスカイラインという車名はやはり違和感が・・・。やはり世間で巻き起こった批判の通り、日本のユーザーが不在のままコンセプトが完遂してしまった感は否めません。

  そしてアテンザは・・・というと、現行モデルになってから残念なことにCセグであるアクセラの「ストレッチ版」の設計になってしまいました。Cセグのシャシーを伸ばしてEセグの代替需要を満たしてしまうあたりが、マツダの上手いところではあるのですが・・・。そもそも安定志向のハンドリングを持つクルマが揃うEセグ市場に、ストレッチ版のアクセラみたいなクルマを潜りこませれば、「アテンザのハンドリングはこのクラスにはクイック過ぎる!」なんて感想が複数の有名ライターから出てくるのも当然のことです。

  しかしアクセラ譲りのストラットでは超一流のリニアなハンドリングとはいかず、さらに言えば初代・二代目のアテンザが世界を驚愕させたあのリニアなハンドリングからはいくらか「退化」してしまっています。もちろんハンドリングばかりがクルマの価値ではありません。そこで改めてこのGJアテンザの売りは何なのか?・・・「デザイン」「ディーゼル」「MT」・・・この辺を上手く組み合わせて理解してくれ!ってところでしょうか。ユーザーへ丸投げですか? マツダは頑張っていると思いますけど、現行アテンザの「部分最適化」主義はどうも気になります。やはり「アテンザ」と名乗るのであれば、大きくまとまった世界感と常に「世界最高」を意識させるクルマであってほしいです
(前述のスカイラインには気概を感じますが・・・)。

  レクサスISはどうか? 失礼を承知で言わせてもらうと、「最高の材料があるのにシェフが凡人か小者・・・」全体としては悪くはないですし、相対的に見ても随所に優れた点が見られますけど、各部の設計から乗り味に至るまで決定的にオリジナリティが無いです。なんかに似てる!と気がついてしまったらもうダメですね。期待して乗っても残念ながら「独特の世界観」なんてものは何も見えてきません。まずドアを開けたときの質感からしてF30系3シリーズの雰囲気がプンプンします。これで「お〜ビーエムじゃん!」って喜んでくれる福野礼一朗さんみたいなオッサンキャラならいいでしょうけど、私は「レクサスって何なんだよ・・・」とテンションがガタ落ちでした。

  それでもレクサスが自ら「頑張りました!」と胸を張るだけあって、シャシーとそれに据え付けられているインパネフレームやシートなどのガッチリ感は、最近のドイツ車には感じられないくらいに立派なもので、これだけでも十分に価値はあります!がしかし・・・このガッチリしたシャシーから連想してしまうのが、今度はスカイラインです。もっと「柔」なイメージがレクサスにはあったのですけど、今度のISは石畳みたいな舗装路を走らせたら、突如として歴代スカイラインの乗り心地が甦ります・・・なんじゃこりゃ?

  最後にレガシィB4ですが、このクルマはデビューの最初からやらかしてしまいました。アメリカで先行して公開されたのですが、プレス発表会でやたらと派手な演出のあとに登場してきた実車を見たメディアの人々が、あまりの華の無さにポカンとしちゃってました。21世紀にもなってアメリカ人にバカにされるデザインはキツいです。日本車の恥さらしです!そんなクルマに400万円も払えるか?スバルは思いっきり反省しろ!絶好調すぎて生産能力が限界を迎えているスバルだそうで、北米市場でここ数年での成長は目覚ましく3年前までダブルスコアを付けられていたVW/アウディを見事に逆転しました。しかし気がつけばアメリカにまだまだ地盤が無いはずのマツダのアテンザにレガシィB4があっさり負けてる!どうやらマジでアメリカ人はレガシィがダサい!と判断したようですね・・・。このブランドはDセグセダンに関してはド素人!プライドがない! ・・・とまあ厳しく言ってみましたけど、それでもドイツ車のDセグ買うくらいならレガシィB4にしておきます。

  400万円のクルマの水準から見れば不満はあるけど、やはりスバルのフラッグシップセダンだけあって、各部の作り込みは申し分がありません。田舎のお袋さんを乗せるのには、いろいろと「ちょうど良い」クルマになってます。1500mmを超える車高はややシルエットを悪化させますが、後席の乗り込みやすさは◎ですし、リアシートヒーターが標準装備。地味だけど堅実なデザインは、「清潔感」の裏返しですし。親孝行のクルマにはいいと思います。自慢のAWDを発揮して、雪深い温泉宿にでも連れていってあげましょう。ただし400万円と聞くとお袋さんも困惑するかもしれないですが・・・。

  さてこんな調子でDセグ全部を血祭りに挙げて行きたいと思います。次回はドイツ車を語り尽くされたステレオタイプな表現で、改めてコケにしていきたいと思います。


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↓Dセグ特集!渡辺敏史さんがアテンザ・スカイライン・IS・レガシィをバッサリ!
だけど異論あり!

  

  

  

2015年6月16日火曜日

ジャガーXE が退屈なDセグセダン市場をぶっ潰す!

  ジャガーXEにはまだ乗ってません! けれどもなんかとってもいい雰囲気の情報が次々と入ってきています。「オマエの想像なんてどうでもいい!」という人は時間のムダなので、どうぞページを閉じて退場してください。このあと延々と「想像」しか出てこない退屈極まりない話で恐縮ですが、「ジャガーXEがセダンのあり方を再定義してくれるであろう展望」について飽きるまで語ります。一応、私なりには「これ」を語る意義が十分にあると感じているのですが、実際のところ家族や親しい人、そしてクルマ好きの友人に対してさえ話すのは、少々気が引けるくらいに私自身が「想い」が強過ぎるんですよね。まあブログってとっても便利だなって改めて思います。

  まだ見ぬジャガーXEに過剰な期待をかける理由はいくつもあります。既に公表されているデザインがなかなか渋くて素晴らしいとか、海外で試乗したカーメディアの反応が一様に好意的とか、そういうのは全くもって関係ないです。7月号のモーターマガジンで、超有名ライターの島下さんがレビューを書いていらっしゃいましたが、これを読んだ時に失礼極まりないですが、あまりにも私の想像通りの内容に、寒気がするほどに変な「デジャブ感」を覚えたくらいです。ジャガーが相当早くに新型セダン「XE」の設計上の概要について情報を出していましたが、この段階ですでにかなりのイメージが固まっていました。インスピレーションというヤツでしょうか。このXE開発の3本の柱といえる「アルミ」「サス」「エンジン」の内容を聞いたとき、ジャガーの開発にはとんでもない「カーガイ」が関与していて、そしてこのクルマが期待通りに作られ何年後かにこれを絶賛している自分の姿がありありと浮かびました。

  先ほども述べましたが、島下さんのレポートもまるで夢遊病のまま海外まで行って乗ってきた自分が書いた!かのような内容でした。3シリーズを初めとするDセグセダンの主流派をみんなまとめて引っくり返すクルマが現れるとしたらこのXEだ!みたいな内容だったと記憶しますが、なぜこのレビューに「乗ってもいない」自分が、これほど病的なまでに「絶対にそうだ!」と思うのか・・・なんだか自分でも怖いくらいですが、そういう確信ってしばしばありますよね?。私はこれまでジャガーのオーナーになったこともありませんし、このブランドのクルマを運転した機会はわずかに2回(しかも数分)ですので、ジャガーに対する個人的な信頼感「ジャガーならいいクルマだろう!」というのはほぼゼロに近いです。もっとも所有しているマツダであっても、今ではそんな「信頼感」はまったくといっていいほど無いですけど。

  ジャガーの何を信じられる?と言われたら、「現在の不遇な状況」と即答したいです。端的に言うと今のジャガーは間違いなく「名車」が生まれてきやすい環境だと言えます。ジャガー・ランドローバー(J&L)は現在はインドの自動車メーカー「タタ」の傘下にあります。「タタ」はインドでは一番有名なメーカーですが、本国インドの市場では台数ベースでスズキに負けてしまうほどで、北米、中国の2大市場にも「J&L」以外の展開は出来ていません。新興国の成長メーカーとはいえ、グローバルではまだまだトップ10グループ(VW、トヨタ、GM、ルノ日産、ヒュンダイキア、フォード、フィアットクライスラ、PSA、ホンダ、スズキ)にはほど遠いですし、その下にひしめくBMW、メルセデス、マツダ、スバルと成長著しい中国勢からも遅れをとっている規模に過ぎません。

  それでも窮地のJ&Lに手を差し伸べた「タタ」は、カネは出すけど口は出さない主義のようで、少々の開発ソースを得て復活を期すジャガーが真っ先に手掛けたのが、意外なことにピュアスポーツの「Fタイプ」でした。「何故?」という周囲の戸惑いをよそに、クルマ自体は予想をはるかに上回る意欲的な設計と価格設定によって、ラグジュアリーカー市場に旋風を巻き起こす存在になっています。欧州・北米では大型セダンのシェアをまだまだ少なからず持っているので、ブランドイメージを盛り上げるために新型スポーツの「Fタイプ」を作って「ジャガー復興」をアピールする狙いがあるようです。このクルマの販売戦略は関しても、顧客リストのXJユーザーのお金持ちに対して、「セカンドカーにFタイプどうですか?」と持ちかけることができるので、J&Lよりも経営基盤がしっかりしている日本メーカーが作るよりも、販売に関してはいくらかハードルが低かったと推測できます。

  今回はさらにブランドの裾野を広げるべくXEの開発を行いました。世界のほとんどのブランドにとっては、「Fタイプ」(専用設計スポーツ)の前に「XE」(中型セダン)を作るのが全くのセオリーなのですが、先述の通り「特殊」なブランドであるジャガーにとっては順序は逆のようです。つまりジャガーはBMWやレクサスというよりも、フェラーリやアストンマーティンのような特殊なブランドアイデンティティを持っているということです。そしてジャガーにとってはDセグセダンの展開こそが、ライバル関係を考えると非常にハードルが高いとも言えます。フォード傘下時代にモンデオとの共通設計の「Xタイプ」くらいしか経験の無いDセグセダンに、自前の新開発のFRシャシーで挑むという計画の裏には、経営陣にそういう決定をさせるだけの強烈な個性の「作り手」の存在があるのでは?と思うのです(少々飛躍がありますがご了承を)。

  「ブランド存続の危機」に瀕した自動車メーカーにはしばしば「偉大な設計者」が生まれます。奇才・天才の類いが最も活躍しやすいのが「ピンチの局面」というのは自動車業界に限った話ではないですけど。今のジャガーと同じような境遇に置かれていたのが、12年くらい前の日産とマツダでしょうか。ご存知のようにミニバン&コンパクトカーに国内市場を席巻され、海外市場でもこれといったヒット車を出せていなかった両メーカーは赤字転落からの再建の目処が全く立たずに、「技術力」を手土産にそれぞれルノーとフォードに身売りしていました。今でこそ第二次産業の「勝ち組」として日本の自動車各社は確固たる基盤と将来に渡っての技術革新への道筋を持っていますが、当時の自動車産業は「淘汰が避けられない」完全な斜陽と見做されていました。日本にはまだレクサスは無く、バブル気分が抜け切らない多くの日本人の感覚からしたら日本車のポジションは完全に輸入車の「下」そんな時代でした。誰がここから日産とマツダの復活を予測できたでしょうか?

  現在のジャガーに対する、世界の人々の認識も同じようなもので、フォードの古いシャシーを使って作られるフラッグシップサルーン「XJ」が、レクサスLS、Sクラス、クワトロポルテ、パナメーラといった超一流の高級サルーンに全く引けを取らない!と感じるクルマ好きは相対的に少ないと思います。いくら英国王室御用達だといっても、今のジャガーにレクサスやメルセデスと互角にやり合う基礎体力は無さそうですし、このクラスのクルマですら自前でシャシーが開発できないという哀れな状況です。しかも実際に運転してみるとやはり「遮音」「スペシャル感の無いアシやハンドリング」「内装」などなど・・・あれこれと「格差」が出てきます(もちろん一定の高級感はありますけど)。

  XJやXFのシャシーがすでに耐用年数を超えているのに、シェアを持っていないDセグに先に新開発シャシーを投入してくる戦略は、まさに「捨て身」と言えます。価格設定がよりシビアになるDセグで、長年作ってきて強固なシェアを持つ老舗に勝負を挑む・・・「玉砕」すらチラつく中での狂気的な「督戦」。そんなシチュエーションがどことなく先ほどの日産やマツダと被ります。今さら言うまでもないことですが、「V35スカイライン」で北米プレミアム市場に血路を切り開いた日産と、「GGアテンザ」で欧州を驚愕させたマツダには、それぞれ水野和敏、金井誠太という生え抜きの「天才的指揮官」がいました。そしてどちらも掲げた目標は「世界一のクルマをつくる」(=E46BMW3シリーズを倒す!)でした。

  日産もマツダも周囲の冷ややかな評価を覆す目覚ましい成果を挙げたわけですが、ちょっと口惜しいことに、この事実を日本の底意地悪いカーメディアどもがこの事実を積極的に報道せずにむしろ黙殺したこともあり、日本のクルマ好きでもこの偉業を知らない人が結構いるようです。先日もルマンで日本勢が完敗すると「日本車がドイツ車に勝てるわけがない」とか言い出す人々が続出していました。もちろんポルシェやアウディを批判するつもりはないですけど、湿気が多い日本やシンガポールで開催されたら全然違う結果じゃねーの?って気もしますが・・・。さてジャガーに対する期待がどこから生まれてきたかについて、少しくらいは伝えられたかなと思いますが、まだまだ言い足りないので、続きは次回にしたいと思います。ここまで「妄想」にお付き合い頂きありがとうございます。

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2015年6月7日日曜日

BMW3シリーズがマイナーチェンジだそうで・・・

  BMWの「330i」と聞けば、普通なら直列6気筒のモデルだと何の疑いもなく思いますよね。今回のマイナーチェンジで330iは直4ターボになるそうですが、果たして下2桁の「30」は具体的に何を表しているんですかね?「馬力」?「トルク」?「価格」?これはBMWマニアでも簡単には説明できない「BMW進法」です。この表記が分り易いという人もいるのかもしれないですが、同じエンジンを使った3シリと5シリでも数字が違ったりすると、何だかブランドの名声に相応しくない「虚偽的」な情報発信ではないかという気が・・・。何でドイツプレミアム車(あとレクサスと日産も)は「数字」に拘るのでしょうか。318i〜340iまでずらりと用意されれば、私のような小心者は340iを買わなければ!という強迫観念の「カモ」にされている被害者意識から、あまりマトモに購入を検討できないでいます(日本にはセダンの340iは無いみたいですが)。

  決してダメなクルマじゃないことは判るんですけど、このブランドの販売戦略には無意識の内にどうも嫌悪感がありまして、結局のところどう間違っても買わないクルマになってしまい、選択肢が自動的に減っているのがなんだか口惜しいです。噂によると最近では値引きがなかなかスゴいことになっていて、アテンザXDのLパケをマトモに買うくらいなら、320dの方が安く手に入るみたいですね(もちろん新車です)。ここまでお手軽ならば、ちょっと試してみようか?という気分に度々なるのですが、乗りに行って素直に感じられるのは、「さすがBMW!スムーズだ!」と「やっぱりブランドの下流だな・・・」という背反で、結局はプラマイゼロな印象です(決してトータルマイナスではないですけど)。そしてやっぱりドイツ車・ドイツブランドは日本のクルマとは全く文化が違うんだなと改めて思うわけです。

  日本ブランドにとってのセダン(このブログでターゲットとするクラスのもの)は、あくまで「極上」であることが最低条件です。国産のセダンはどれに乗っても「このクルマはコンパクトカーとは違う!」という悲痛なまでの開発者の意地を感じます。言うまでもないですが、コンパクトカーの2倍以上の販売価格ですから、誰でも簡単に判るレベルの「差別化」を盛り込む必要があります。それはまさに「クラウン/マークⅡ/コロナ/カローラ」の時代から日本メーカーのセダン開発に染み込んできたDNAです。当然にBMWやメルセデスにもさらにシビアなブランド内ヒエラルキーが存在しますから、「差別化」という意識はあります。しかしメルセデスやBMWがこれまで歩んできた背景には、「アウトバーン追越レーン仕様車」という絶対的に不可欠な要素があって、その中で打ち立ててきた「高性能神話」の延長線上でいまもやや高飛車なセダン商売をしているといえます。

  メルセデスやBMWが持つ「特性」の前に実力差を見せつけられた1980・90年代の日本車がどうだったなんて、ハッキリ言って、今カーライフを満喫する人々にとっては別にどうでもいいことなんですけど、自動車評論家や古くからのクルマ好きの皆様のイメージはまだまだ20年前当時のままなんだと感じることも多いです。大変に失礼ですが、世間からみればクルマ好きとは大概はただの「バカ」なので、時代の変化について認識を改めろという方が無理なのかもしれませんが・・・。まあとにかく、「日本車はダメだね〜」みたいな口癖の人はプロ・アマ問わずたくさんいますし、それはまあ仕方のないことなんだと思います。

  2000年代を迎えて、トヨタ以外の普通車はグローバル化が必須となり、当然に日本のセダンにもメルセデスやBMWと同じ「250km/h対応仕様」なる処置がとられるようになりました。まあ簡単に言うとメルセデスやBMWの上級モデルと同じくらいの限界性能を備えたシャシーを当たり前に使っているという話です。現在も欧州で中型車を販売しているトヨタ(レクサス)・日産(インフィニティ)・ホンダ・マツダ・スバルの5メーカー全てがこの水準をクリアしています。こういったごくごく常識的な前提を、なぜか読者に対してひた隠しにして、ドイツ車にはまだまだ及ばない〜!なんてクソ論を展開するライターが困ったことに多いですね(そういう偽善者しか仕事が貰えない世界か?)。

  確かに日本メーカーが「250km/h対応仕様」を取り入れたのは、マツダが初代アテンザ(2003年〜)から、レクサスは現行LS(2006年〜)、GS(2012年〜)、IS(2013年〜)からであり、まだまだメルセデスやBMWに比べれば歴史が浅いです。しかしトヨタがBMWと、日産がメルセデスと、対等な関係での提携を結んでいて、高級セダンにおける共同開発が盛り込まれていることからも、日本勢がすでにメルセデスやBMWと全く同じ土俵に立っていることがわかります。なによりもこれらのクルマを逐一試してみればわかりますが、走行安定性においてドイツ勢に明確なアドバンテージなどは一切なく、結局のところ系列部品メーカーを抱える日本勢の「インテグラル・アーキテクチャ(擦り合わせ)」による高い技術力が目立つ・・・というのが嘘偽りのない評価なんです。

  それでもメルセデスやBMWのコクピットに収まったときに感じる、ブランドのフィロソフィみたいのが好き!という人の感性を否定するつもりは毛頭ありません。確かにCクラスも3シリーズも「コクピット第一主義」とでもいうべき意匠は強く感じます。日本勢がちょっと「弱い」と感じる点がここです。マツダ・アテンザはMCによっていよいよ欧州車への憧れを隠せないインテリアになりましたし、スバル・レガシィはそんなマツダを参考にしている節が多くあります。一方で、スカイラインやISはというと、高い質感を誇ってはいますが、残念ながら「足踏み式サイドブレーキ」のギコギコしたフィールが、完全に世界観をぶっ壊しています。同じくCクラスのコラム式シフトも幾分かブランドイメージを後退させてはいるのですが・・・。インテリアに関してはあくまで素朴な3シリーズが秀逸?なのかもしれません。

  「NVHやハンドル/アクセル/ブレーキのフィール」を絶対視する日本勢と、「コクピット第一主義」のドイツ勢ということで、ユーザーの好き嫌いの問題じゃないか?で終わらせてもいいのですけど、先日読んだ「モーターマガジン7月号」のDセグセダン評があまりにもひどかったので、当該雑誌の主筆を務めるアホなオッサンライターに向けて「放言」したいと思います。現行のCクラスと3シリーズの最大にして決定的な弱点は、完全にドイツ車としてのポリシーが欠落しているところなんですよね。BMWとメルセデスの営業マンにそれぞれ言ったことがありますが、「これって日本車っぽくないですか?」ってことです。フロントデザインの押し出しの強さだったり、想像よりもずっと柔らかいアシ回りだったり、座面の調整幅が日本勢よりも自由度がなく、その分シートが柔らかくて摩擦が少ないものだったり・・・。
 
  Cクラスも3シリーズも期待値が高い分だけ、乗ったあとの感想は「なんか見失っているんじゃないの?」という残念な気持ちです。スカイライン、アテンザ、レガシィはどれももっと乗り味に「個性」があります。この3台はDセグのゾーンを突き破り、Eセグに近いということも、クルマの奥深さがあるという点に影響してはいると思います(安定感などに)。日本勢がめいめい勝手に進化を遂げているのに比べると、Cクラスや3シリーズの進化はハッキリ言ってノロいですし物足りないです(Cクラスなんて出来損ない?)。日本で走るならこのサイズがベストで、エンジンも「必要十分」なもので、多段式ステップATが・・・なんてステレオタイプで「中身」のない評論をあちこちで見かけますが、こんな能天気な文章で納得するのは「クルマに興味ない人々」だけじゃないですかね。さて「モーターマガジン」が一体いつまでCクラスや3シリーズを日本勢の上に置き続けられるか見届けたいと思います。


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↓BMWやメルセデスは日本車の足元にも及ばない!と放言しているプロライターもいますけどね!アテンザ大絶賛!が収録されております!