2013年7月5日金曜日

「ドイツ車に足りないものを持った秀逸・中級車」 アウディA6/S6

    はじめに・・・本ブログ記事では、
「入門車」⇒2~2.5LのNAのDセグセダン 
「中級車」⇒3.0~3.7LのNA/ターボのD/Eセグセダン 
「上級車」⇒V8以上のエンジンを搭載した高級モデル
と独自の(勝手な)クラス分けを用いています。ご了承ください。

  高級車としてのセダンは今でも街中で目立つ存在ではある。しかしレクサスGS&LS、BMW5&7、メルセデスE&Sといった日本でもおなじみの高級セダンのデザインを「相対的」ではなく「絶対的」に評価するならば、果たしてどれほど胸がときめくだろうか? あくまでフォーマルな状況で使われることを想定されているから、スポーツカーのような華美な意匠は御法度なのだろうが、それでもちょっと値段なりのドキドキ感があってもいいのではないかという気がする(私がガキすぎるだけかもしれないが・・・)。

  それでもこのアウディA6に関しては、他とはひと味違う高級車のフォルムを感じる。「中級車」に分類されるクルマは一般に車体の大きさに比してランプ類やキャラクターラインが小振りで、やや無機質な「間延び」を感じるデザインに陥ることが多い。しかしこのアウディA6は大きめに採られたグリルが車体の雄大さに良くマッチしていて、ライバル車と比べてかなりダイナミックで統一感のあるデザインに仕上がっている。このA6が2004年に登場したとき以来、高級セダンのデザインは突如として進化を始めた。その後に登場したメルセデスEクラスやレクサス各車、トヨタクラウンなどが一生懸命にフォローしているが、いまだにアウディを超えるグリルデザインは登場していないようだ。

  このアウディA6/S6の実力として高く評価したいのは、エンジンの設定がとても絶妙で乗り手のニーズに真摯に応えようといている姿勢だ。燃費重視のハイブリッドのFFモデルもあるが、とりあえずアウディ本来の楽しさを味わうにはAWDの「クワトロ」を選びたい気がする。日本公式発売のA6に設定されているガソリンエンジンは2.8LのNAと3.0Lターボの2種類のV6だ。この2グレードはなんと価格が200万円以上も違うからちょっとびっくりしてしまう。当然にこれだけ価格の高い3Lターボモデルはアクセルを踏み込んだ瞬間に「全能の神」になったようなトルクが味わえるので、一度乗ってしまったらもうヤミツキになるほどだ。

  廉価の2.8Lモデルも決してパワー不足なんて感じさせないだけの実力を「隠し持って」いる。こちらはアウディには珍しいNAエンジンでこれがメルセデスの3.5Lに負けないくらいによく回る。3Lターボに使われているエンジンとは特性が違っていて、完全に作り分けられている。廉価モデルにも関わらず、MTモードで低速ギアに抑えて加速していけば相当にパワフルだ。トラクション全開のAWDにNAのレスポンスが染み渡っていく「快感」はターボモデルには無い良さがある。アウディ車に何を求めるかにもよるだろうが、このベースグレードのエンジンも相当に楽しめる。

  ちょっと野暮だが、A6のこのガソリン2グレードの設定はスバル・レガシィのNAとDITターボモデルの関係に近い。「入門車」のレガシィにとって「中級車」のA6は上位互換車といってもいいかもしれない。「入門車」であるアウディA4は2Lターボの超ロングストロークというトルク重視の設定で、スポーティさに欠けるのであまりオススメはできないが・・・。

  3Lターボは燃費さえ気にしなければ、「GTカー」としての実力を全方向的に発揮できる「抜群」なクルマで、その実力は並みいるFRのライバル車を多くの面で上回る実力を持っている。なによりAWDの直進安定性とトルクが出やすいエンジンの組み合わせこそが、ガソリンエンジン時代の最後を飾る最高の「GTカー」のパッケージなのではないかと思える。こういうクルマをレガシィ以外にも「ターボ本家」の三菱や日産にも期待したかったがどうやらどちらも全く作る気はなさそうだ。このA6のデザインが若くして日産を辞めてアウディに活路を求めた日本人デザイナーによって生み出されたことを考えると、国産車好きとしては非常に残念に感じてしまうのだが・・・。

         ↓A6のデザイナー和田智さん。やはりこのデザインは日本人に響く。
  

   

  

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