2013年6月20日木曜日

フォルクスワーゲンが作った入門車  フォルクスワーゲン CC

   はじめに・・・本ブログ記事では、
「入門車」⇒2~2.5LのNAのDセグセダン 
「中級車」⇒3.0~3.7LのNA/ターボのD/Eセグセダン 
「上級車」⇒V8以上のエンジンを搭載した高級モデル
と独自の(勝手な)クラス分けを用いています。ご了承ください。


  フォルクスワーゲンはハッキリ言って「嫌い」なブランドだ。大衆メーカーなのに異常なほどの収益体制を誇っていて、主戦場の欧州がいくら不況で危機的状況を迎えようとも必ず黒字だ。このVWの「健全経営」の秘訣は、「脱メーカー」「外交重視」「ステマ」の3つではないかと私は思っている。いずれの戦略もいまではトヨタやGMが追従の動きを見せるなど、経営理論としては極めて優秀なものらしい。しかし実際にクルマを使うユーザーにどういう影響があるのかというと、一概に良い悪いでは判断できないところもある。

  よってVW車を調べるときにはついつい「儲けのカラクリ」を勘ぐってしまう。日本市場におけるVWの基本的な販売戦術は「値引き」だと言われている。ただこの値引きは「安くない」値引きである。いまやインターネットが普及しているので、ちょっと時間があれば、簡単に日本価格と北米価格を比較することもできる。よって北米と日本で共通して売られているクルマの価格差の割合を見れば、どのメーカーの日本価格がお得なのか分かる。VWは残念ながらドイツメーカーとしてはワーストと言っていいレベルだ。ドイツメーカーの中ではブランド全体として価格差が少ないのが、意外にもメルセデスだ(北米では別格と言っていいほど高価)。

  フォルクスワーゲンはカタログ価格だけを見ると、MBやBMWよりも不利なのだが、それでもVWがそこそこ売れるのは、値引きで台数を確保しているからだ。この「CC」も北米$30000〜で、日本価格は499万円とちょっとした驚きだ。3シリーズとISが$32000〜、Cクラスが$35000〜、スカイライン(3.7L)が$37000〜がそれぞれ、400万円程度の本体価格なので、「CC」がかなり高いのが分かると思う。それでも価格というのは「需要と供給」で決まるので、VWのディーラーを足しげく訪ねれば、このフラッグシップモデルの「CC」もそれなりの価格で手に入れられるかもしれない。

  価格の話はさておき、商売上手なイメージが先行してしまうVWだが、クルマを作る技術自体は豊富に持っている。そのVWが傘下のアウディA4(440万円〜)よりも高い価格設定をしているこの「CC」というクルマはなかなか興味深い。4ドアクーペとして設計されているので、そのスタイルはA4というよりA5スポーツバックに近い。A4とA5スポーツバックには約100万円の価格差が設定されているが、ちょうどこの「CC」がその中間の価格になっている。A4のスタイリングは正直言ってやや退屈なので、A5スポーツバックに惹かれる。しかしこちらは直4モデルにしてはやや高価すぎるので、A5とほぼ同じスタイリングを誇る「CC」で代替するというのも一つの方法だ。

  VWにはパサートという1.4Lターボ(TSI)を積んだセダンもある。しかし「入門車」として幅広い速度域での運転経験を高めるにはちょっと物足りないように思う。パサートを追いかけて走るとき、まるで軽ターボのような動きだと感じる。低速トルクが出ていて、出足はなかなかだが、その後の中速域の伸びはかなりかったるいようだ。そんなエンジンでは走っていても面白くない。一方で「CC」には1.8Lターボというアウディのようなエンジンが使われている。こちらのエンジンなら中速域でもしっかり伸びるし、メルセデスの1.8Lターボエンジンのような特性があるのではと想像できる。

  実はこの「CC」に関しては開発はアウディにある程度丸投げされているらしい。VWグループの新型モデルの開発はVW本体とアウディとポルシェによって手分けされている。アウディA3までのモデルはVWが作り、A4~A7とVWのCCをアウディが担当し、A8とパナメーラをポルシェが行っているそうだ。つまりA1やA3を買うと、VW車にアウディ料金を払っていてちょっと損した気分になり、CCやA8を買うと上級ブランドのクルマが手に入るちょっと得した気分になるということだ。

  しかもこの「CC」はブランドのフラッグシップモデルということで、内装はVW車の中では随一の高級感を誇っている。シートの配色も鮮やかで、ゴルフGTIの冴えないチェック柄のシートなどとは根本的に違ってセンスの良いものになっている。やはりフラッグシップモデルはどんなブランドでもとても気合が入っていて、「お買い得」だ。実際にどのくらい安くなるかはわからないが、乗り出しで450万円以下(BMW3より安い)になるならば、現実的な購入対象になるクルマだと思う。

 


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